
貴社をさらなる成長へ導くIPO。その成功の鍵となるのが、最適な市場を選ぶことです。2022年4月、東京証券取引所は市場区分を見直し、企業はより戦略的な市場選択が求められています。
ここでは東京証券取引所、名古屋証券取引所、札幌証券取引所、福岡証券取引所の各市場の種類を詳しく解説します。それぞれの市場の特徴や利点と欠点、そして上場基準を比較検討して、貴社にとって最良の市場選択を支援いたします。
IPOを成功させ、企業価値を最大限に高めるための最初のステップを、この記事で踏み出しましょう。
東京証券取引所|株式上場の種類

2022年4月4日、東京証券取引所(東証)は従来の市場区分を見直し、新たに次の3つの市場区部を設けました。
加えて、2009年に開設された成長可能性のある企業向けの市場であるTOKYO PRO Marketが存在します。
個別に各市場の基本的な概要をお伝えします。
プライム市場
東証の最上位市場になります。グローバルな投資家との建設的な対話を重視し、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指す企業向けの市場です。
プライム市場に上場している代表的な企業は、トヨタ自動車、キーエンス、ファーストリテイリングです。
高い流動性とガバナンス水準を備えていることが求められます。上場審査はもっとも厳格です。
特にコーポレートガバナンスや情報開示体制については、高い水準が求められます。 主に国内外の機関投資家から投資を集めています。
プライム市場のメリット
- 幅広い資金調達が可能
- 国内外の機関投資家からの投資を期待できる
- TOPIXに採用され、国内外での認知度向上
- 社会的信用の向上による企業価値向上
- 知名度向上により優秀な人材を獲得しやすくなる
プライム市場のデメリット
- 上場・維持コストが高い
- 投資家対応の増加
- 買収リスクの増加
- 情報開示の負担増加
- 内部管理体制の強化が必要となる
- 株主からの要求に対応する必要性が高まる
適している企業
グローバルな事業展開を行い、高い収益力とガバナンス体制を有する大企業。
例:海外売上高比率が高い、時価総額が大きい、コーポレートガバナンス・コードの全原則を遵守している。
スタンダード市場
公開された市場における投資対象として、一定の流動性とガバナンス水準を備え、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指す企業向けの市場です。
スタンダード市場に上場している代表的な企業は、日本マクドナルドホールディングス、大正製薬ホールディングスです。
上場審査はプライム市場ほど厳格ではありませんが、一定の水準を満たす必要があります。 個人投資家が多く、機関投資家も一定数存在します。
スタンダード市場のメリット
- 一定の資金調達が可能
- 信用力の向上
- 企業の知名度向上
- 従業員のモチベーション向上
- 帰属意識の向上
スタンダード市場のデメリット
- 上場・維持コスト
- 情報開示の負担
- 投資家対応
適している企業
国内中心の事業展開で、安定した収益基盤を持つ大手・中堅企業。
グロース市場
高い成長可能性を有する企業向けの市場です。事業計画とその進捗状況の開示、一定の市場評価などが求められます。
グロース市場に上場している代表的な企業は、メルカリ、BASE、クラウドワークスです。
上場審査は、将来性を重視するため、収益基準は設けられていません。 ベンチャーキャピタルや個人投資家など、リスク許容度の高い投資家が多い傾向にあります。
グロース市場のメリット
- 早期の上場による資金調達
- 成長資金の確保
- 人材採用力の強化
- 事業の拡大
- 新規事業への進出
グロース市場のデメリット
- 上場・維持コスト
- 情報開示の負担
- 株価変動リスク
- 継続的な成長に対するプレッシャー
適している企業
高い成長可能性を持つスタートアップ企業やベンチャー企業。
※ グロース市場に関する詳細は、「東証グロース上場基準満たして成長を加速【資金調達の最適解】」で取り上げています。
TOKYO PRO Market
TOKYO PRO Marketは、東証が2009年に開設した成長可能性のある企業向けの市場です。
他の市場区分とは異なり、上場審査基準が緩やかで、企業の成長を支援するための様々な制度が用意されている点が特徴です。成長を期待する投資家が多く、企業の資金調達を支援する役割を担っています。
TOKYO PRO Market市場のメリット
- 事務負担の軽減
- 上場コストが低い
- スピーディーな上場が可能
- 柔軟な上場基準
TOKYO PRO Market市場のデメリット
- 流動性が低い
- 投資家層が限定的(原則、プロ投資家のみ)
- 知名度が低い
適している企業
成長段階にあり、将来的に東証グロース市場などへのステップアップを目指す企業。またはプロ投資家からの資金調達を希望する企業。
※ 東京証券取引所の各市場の詳細は、「東証|プライム・スタンダード・グロースの違いと最適なIPO市場選び」で取り上げています。
名古屋証券取引所|株式上場の種類

名古屋証券取引所(名証)も東証の市場再編に合わせて、独自の市場区分を設けています。
個別に各市場の基本的な概要をお伝えします。
プレミア市場
名証の最上位市場であり、高い市場評価を得ている企業向けの市場です。優れた収益基盤や財務状態を有し、個人投資家を含む投資家の継続的な保有対象となることが期待されます。
プレミア市場に上場している代表的な企業は、井村屋グループ、アイカ工業、カゴメです。
上場審査は厳格で、東証のプライム市場と同等の水準が求められます。さらに東証には見られない「一定数の個人株主の確保」など独自の基準も導入されています。主に、地域金融機関や個人投資家から投資を集めています。
プレミア市場のメリット
- 東証プライム市場に準ずる高い信用力
- 幅広い資金調達が可能
- 企業ブランディング効果
- 投資家や取引先からの信頼感向上
プレミア市場のデメリット
- 上場・維持コストが高い
- 厳しい上場基準
- 情報開示の負担
適している企業
東証プライム市場と同等の水準を満たす、高い収益力と安定した財務基盤を持つ企業。
メイン市場
安定した経営基盤を確立し、一定の事業実績を持つ企業向けの市場です。個人投資家をはじめとした投資家の継続的な保有対象となることが期待されます。
上場審査はプレミア市場ほど厳格ではありません。 地域の個人投資家や機関投資家が中心です。
メイン市場のメリット
- 地域密着型の企業として認知度向上
- 中部圏を中心とした資金調達
メイン市場のデメリット
- 東証と比較して知名度が低い
- 流動性が低い
適している企業
地域経済に貢献し、安定した事業基盤を持つ中堅企業。
ネクスト市場
将来のステップアップを見据え、事業計画とその進捗状況を適切に開示し、成長を目指す企業向けの市場です。
上場審査基準は、成長可能性を重視し、収益基準はありません。 ベンチャーキャピタルや、将来的にメイン市場またはプレミア市場へのステップアップを目指す企業を応援する個人投資家が多いです。
ネクスト市場のメリット
- 比較的緩やかな上場基準
- スピーディーな上場が可能
- 企業規模を問わない
ネクスト市場のデメリット
- 知名度が低い
- 流動性が低い
適している企業
高い成長可能性を持ち、将来的に上位市場へのステップアップを目指す企業。
札幌証券取引所|株式上場の種類

札幌証券取引所(札証)は、地域経済に根ざした企業の上場を支援しています。市場区分は「本則市場」と「アンビシャス市場」です。個別に基本的な概要をお伝えします。
本則市場
札証の主力市場であり、一定の実績を有する企業向けの市場です。上場審査は、標準審査期間が3ヶ月で、東証に比べて緩やかです。
札証単独上場企業を主なメンバーとする連絡組織、「札証単独上場会社連絡会議」を創設し、会員企業の意見交換や情報共有などを促進しています。 北海道に拠点を置く企業や、北海道にゆかりのある投資家が多いです。
本則市場に上場している代表的な企業は、雪印メグミルク、北の達人コーポレーション、北海道電力です。
本則市場のメリット
- 地域での知名度向上
- 信用力の向上
- 優良企業としてのステータス
- 北海道経済への貢献
本則市場のデメリット
- 流動性が低い
- 全国的な知名度が低い
適している企業
北海道に根ざした事業を行い、安定した収益基盤を持つ企業。
アンビシャス市場
成長性を重視した新興企業向けの市場です。上場時の時価総額は審査要件とせず、成長性に関する推薦書や株主数などを緩和、公募を要件としないなど、新興企業が最も上場しやすい市場です。
成長を期待する個人投資家や、ベンチャーキャピタルなどが多いです。
アンビシャス市場のメリット
- 緩やかな上場基準
- スピーディーな上場が可能
- 本則市場へのステップアップ
- 成長資金の確保
アンビシャス市場のデメリット
- 知名度が低い
- 流動性が低い
- 投資家層が限定的
適している企業
成長性が見込まれる、北海道に関連する中小企業。
福岡証券取引所|株式上場の種類

福岡証券取引所(福証)は、九州・沖縄地方の企業を中心に上場を支援しています。市場区分は次のとおりです。
個別に基本的な概要をお伝えします。
本則市場
福証の主力市場です。上場審査は、申請会社の企業グループを対象とし、形式基準および実質審査基準に基づいて行われます。
本則市場に上場している代表的な企業は、九電工、久光製薬、サニックスです。
審査では、上場後に公正な株価の形成や円滑な流通の確保が行えるか、また公益や投資者保護の観点から上場会社としての適格性を有しているかが検討されます。その結果をもとに、上場の適否が判断されます。地元の金融機関や個人投資家が多いです。
本則市場のメリット
- 九州地域での知名度向上
- 信用力の向上
- 地域金融機関からの資金調達
本則市場のデメリット
- 流動性が低い
- 全国的な知名度が低い
適している企業
九州地域に根ざした事業を行い、安定した収益基盤を持つ企業。
Q-Board
成長可能性を有する企業向けの市場です。上場審査は、成長可能性を重視し、収益基準はありません。
主幹事証券会社が、その企業がQ-Boardの対象となるかどうかの判断を行い、福証へその理由等を書面にて提出する必要があります。 ベンチャーキャピタルや、成長を期待する個人投資家が多いです。
メリット
- 緩やかな上場基準
- スピーディーな上場が可能
- 本則市場へのステップアップ
デメリット
- 知名度が低い
- 流動性が低い
- 投資家層が限定的
適している企業
成長性が見込まれる、九州周辺に本社を構える中小企業。
Fukuoka PRO Market
プロ投資家向けの市場です。F-Adviserの調査を基に、福岡証券取引所が上場審査を行います。特定投資家(プロ投資家)のみが取引を行う市場です。
市場のメリット
- 非常に緩やかな上場基準
- スピーディーな上場が可能
- 資金調達による事業拡大
市場のデメリット
- 知名度が低い
- 流動性が低い
- 投資家からの注目度が低い
適している企業
全国各地の成長が期待される企業、特にアーリーステージの企業。
各市場の上場基準(形式要件)

企業が上場を目指す際には、まず「形式要件」をクリアすることが必要です。形式要件とは、証券取引所が定める、企業が株式を上場するために最低限満たすべき基準のことです。
投資家保護の観点から、上場企業としての体裁を整えているかを確認するために存在します。
各市場における形式要件の概要は、以下のとおりです。
※ 形式要件の数値基準は変動する可能性があるため、最新の形式要件は必ず各証券取引所のウェブサイトでご確認ください。
プライム市場の形式要件(東証)
- 株主数…800人以上
- 流通株式数…2万単位以上
- 流通株式時価総額…100億円以上
- 流通株式数(比率)…上場株式等の35%以上
- 時価総額…250億以上
■純資産額(上場時見込み)
連結純資産の額が50億以上、かつ単体純資産の額が負ではないこと
■事業継続年数
新規上場申請から起算して、3か年以前から株式会社として継続的に事業活動をしていること
■利益または売上高
最近2年間における利益の額の総額が25億円以上。
最近1年間の売上高が100億円以上、かつ時価総額が1,000億
スタンダード市場の形式要件(東証)
- 株主数…400人以上
- 流通株式数…2,000単位以上
- 流通株式時価総額…10億円以上
- 流通株式数(比率)…上場株式等の25%以上
■純資産額(上場時見込み)
連結純資産の額が正であること
■事業継続年数
新規上場申請から起算して、3か年以前から株式会社として継続的に事業活動をしていること。
■利益または売上高
最近1年間の利益の額が1億円以上
グロース市場の形式要件(東証)
- 株主数…150人以上
- 流通株式数…1,000単位以上
- 流通株式時価総額…5億円以上
- 流通株式数(比率)…上場株式等の25%以上
■純資産額(上場時見込み)
基準なし
■事業継続年数
新規上場申請日から起算して、1か年以前から株式会社として継続的に事業活動をしていること
■利益または売上高
基準なし
TOKYO PRO Markeの形式要件(東証)
TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)は、プロ投資家のみが取引を行える市場です。株主数、流通株式数・比率などの形式基準はありません。
(上記、東証の各市場の形式要件は、JPX日本取引所グループ「上場審査基準」より抜粋)
※ TOKYO PRO Marketの詳細は、「東京プロマーケットの上場基準とは? 簡易IPOで企業成長を加速」で取り上げています。
プレミア市場の形式要件(名証)
- 株主数…800人以上
- 流通株式数…2万単位以上
- 流通株式数(比率)…上場株式等の35%以上
- 時価総額…250億以上
■純資産の額(上場時見込み)
連結純資産の額が50億以上、かつ単体純資産の額 正
■事業継続年数
3年以前から株式会社として継続的に事業活動していること。
■利益の額または売上高
最近2年間の利益の額が総額25億円以上。最近1年間の連結売上高が100億円以上、かつ時価総額が1,000億円以上。 ※どちらかに適合すること
メイン市場(名証)
- 株主数…300人以上
- 流通株式数…2,000単位以上
- 流通株式数(比率)…上場株式等の25%以上、他
- 時価総額…10億以上
■純資産額(上場時見込み)
連結純資産の額が正
■事業継続年数
3年以前から株式会社として継続的に事業活動していること。
■利益の額または売上高
最近1年間の利益の額 1億円以上
ネクスト市場の形式要件(名証)
- 株主数…150人以上
- 流通株式数…基準なし
- 流通株式数(比率)…基準なし
- 時価総額…3億以上
■純資産の額(上場時見込み)
基準なし
■事業継続年数
1年以前から株式会社として継続的に事業活動をしていること
■利益の額または売上高
基準なし
(上記、名証の各市場の形式要件は、名古屋証券取引所 上場制度より抜粋)
本則市場の形式要件(札証)
- 株主数…300人以上
- 流通株式数…2,000単位以上
- 流通株式数(比率)…上場株式等の25%以上、他
- 時価総額…上場日に10億以上
■純資産の額(上場時見込み)
3億以上
■事業継続年数
3年以前から株式会社として事業活動を継続
■利益または売上高
基準事業年度の経常利益が5,000万円以上
アンビシャス市場の形式要件(札証)
- 株主数…100人以上、他
- 流通株式数…基準なし
- 流通株式数(比率)…基準なし
- 時価総額…基準なし
■純資産の額(上場時見込み)
1億以上「(最近2年間の営業利益が連続して50百万円以上の場合は、「正」)」
■事業継続年数
1年以前から株式会社として事業活動を継続
■利益または売上高
基準事業年度の営業利益の額が「正」。営業利益の額が「正」でない場合において、収益の向上が期待できる場合を含む ※どちらかに適合すること
(上記、札証の各市場の形式要件は、札幌証券取引所 上場基準概要より抜粋)
本則市場の形式要件(福証)
- 株主数…300人以上
- 流通株式数…2,000単位以上
- 流通株式数(比率)…25%以上、他
- 時価総額…10億以上
■純資産の額(上場時見込み)
連結純資産の額 3億円以上、かつ単体純資産の額 正
■事業継続年数
3年以前から株式会社として、継続的に事業活動をしていること
■利益または売上高
最近1年間 5,000万円以上の経常利益
Q-Boardの形式要件(福証)
- 株主数…200人以上
- 流通株式数…500単位以上の公募
- 流通株式数(比率)…基準なし
- 時価総額…3億以上
■純資産の額(上場時見込み)
連結・単体純資産の額 正
■事業継続年数
1年以前から株式会社として、継続的に事業活動をしていること
Fukuoka PRO Marketの形式要件(福証)
Fukuoka PRO Market(福岡プロマーケット)は、プロ投資家のみが取引を行える市場です。株主数、流通株式数・比率などの形式基準はありません。
(上記、福証の各市場の形式要件は、福岡証券取引所 上場審査基準の概要より抜粋)
- 形式要件を満たすだけでは不十分
- 形式要件はあくまで「形式」的な基準であり、これらを満たせば必ずIPOできるわけではありません。証券取引所は、形式要件に加えて、企業の成長可能性や事業内容なども審査する「実質要件」も重視します。
※ 上場審査に関する詳細は、「【IPO】上場審査とは?審査基準・流れ・対策ポイントを徹底解説」で取り上げています。
IPO準備企業が市場選択を行う際に考慮すべき点

IPO準備企業の経営者が市場選択を行う際には、多岐にわたる要素を総合的に検討し、自社にとって最適な判断を下す必要があります。
考慮すべき主な点は次のとおりです。
個別に内容を見ていきましょう。
企業の成長ステージ・規模・収益性
まず自社の現状を客観的に把握することが重要です。売上高や利益、従業員数、市場シェアといった指標を分析し、自社の規模を正確に把握しましょう。
過去の業績推移や将来の成長予測を考慮することで、現在の成長ステージを判断することができます。これらの分析結果を基に、各市場の上場基準(時価総額、株主数、流通株式数、収益基準など)を満たしているかを確認します。
各市場で求められる収益性の違い
特に収益性については、プライム市場では高い収益性と安定した収益基盤が求められます。
一方で、スタンダード市場では一定の収益性があれば上場可能であり、グロース市場では収益性よりも将来性を重視するなど、各市場で求められる水準が異なります。
最新の財務諸表などを用いて、各市場の収益基準を満たしているかを確認しましょう。
資金調達のニーズ
IPOの目的のひとつに資金調達がありますが、市場によって調達できる資金規模や投資家層が異なります。
IPOによって調達したい資金の額を明確にし、公募増資や売出など、どのような方法で資金調達を行うかを検討しましょう。
調達した資金の具体的な使途を明確にすることも重要です。これらの要素と合わせて、各市場の投資家層や資金調達の実績などを考慮することで、自社にとって最適な市場を選択することができます。
事業計画と市場のコンセプトとの整合性
中長期的な事業計画や成長戦略は、市場選択において重要な要素となります。
高い成長を追求する企業であればグロース市場、安定的な成長を目指す企業であればスタンダード市場といったように、自社の事業計画と各市場のコンセプトとの整合性を確認しましょう。
事業計画におけるリスク要因を分析し、対応策を検討しておくことも重要です。
ガバナンス体制
上場市場は、コーポレートガバナンス・コードへの対応状況や内部管理体制の整備状況についても審査を行います。
コーポレートガバナンス・コードの各原則を理解し、自社の対応状況を確認しましょう。
内部統制システムの構築やリスク管理体制の整備など、内部管理体制を強化することで、各市場の要求水準を満たすように努める必要があります。特に、プライム市場では高いガバナンス水準が求められるため、注意が必要です。
※ 内部統制に関する詳細は、「【IPO】株式上場における内部統制の必要性や目的や要素を解説」で取り上げています。
情報開示体制
上場企業には、金融商品取引法に基づいた適時開示が義務付けられています。
IPOを目指す企業は、適時開示体制を整備し、投資家向け広報活動(IR活動)を実施するための体制を構築することが必要です。
各市場の情報開示に関する要求水準を満たしているかを確認し、各市場のIR活動の状況を参考に、自社のIR活動の方針を検討しましょう。
コスト
上場準備には、監査費用やコンサルティング費用、印刷費用など、多額の費用が発生します。また上場後も、上場料や情報開示費用、IR活動費用などの維持費用がかかります。
各市場におけるコスト負担を比較検討し、資金調達によるメリットと比較して総合的に判断する必要があります。
※ 上場に関する費用の詳細は、「上場(IPO)にかかる費用を解説|審査費用、新規・年間上場料」で取り上げています。
市場特性(流動性、投資家層、知名度など)
各市場の流動性、投資家層、知名度も市場選択の際に考慮すべき重要な要素です。
各市場の売買代金や株価の変動性を分析することで、流動性を把握することができます。また、どのような投資家が多いのかを理解することで、自社にとって最適な市場を選択することが可能です。
企業文化や経営理念との適合性
企業文化や経営理念と市場の特性との適合性も重要な要素です。 例えば、ベンチャー精神を重視する企業であれば、成長性重視のグロース市場を選択することが考えられます。
類似企業の事例
過去に類似の企業がどの市場を選択したのか、その後の業績はどうだったのかといった事例を参考にすることも有効です。
業界、事業規模、成長ステージなどが類似する企業を調査し、類似企業がどの市場を選択したのかを分析します。そして、その理由を踏まえることで、自社の市場選択の判断材料とすることができます。
経営陣の年齢層や経験
経営陣の年齢層や経験も考慮すべき点です。 若手経営者が多い企業であれば、成長性重視のグロース市場を選択することが考えられます。
企業の将来的なビジョン
M&A、海外展開、新規事業進出など、企業の将来的なビジョンも市場選択に影響します。
将来的に海外展開を視野に入れている企業であれば、グローバルな投資家が多いプライム市場を選択することが考えられます。
専門家への相談
上記に加え、各市場の担当者や証券会社と相談し、具体的なアドバイスを受けることも重要です。
市場の担当者には、上場基準や審査プロセス、市場の特性などについて質問します。また、証券会社にはIPOに関するアドバイスや市場選択のサポートを依頼することで、より的確な判断を行うことができます。
情報収集
最終的な判断を下す前に、各証券取引所のウェブサイトやIPOに関する書籍、セミナーなどで情報収集を行いましょう。
IPOは、企業の成長を加速させるための有効な手段ですが、市場選択は企業の将来を左右する重要な決定となります。上記で解説した要素を総合的に判断し、自社にとって最適な市場を選択しましょう。
最適な上場種類を見つけるためのステップ

IPOは、企業の成長を加速させるための有効な手段ですが、どの市場を選択するかは、企業の将来を左右する重要な決定となります。最適な上場種類を見つけるためには、次のステップを踏むことが重要です。
個別に内容を見ていきましょう。
現状分析
まずは自社の現状を客観的に分析しましょう。
■事業規模・収益性・成長性
売上高、利益、従業員数、市場シェアなどの指標を分析し、過去の業績推移や将来の成長予測などを考慮して、自社の規模や成長ステージを把握します。
■財務状況
最新の財務諸表などを用いて、財務の健全性を確認します。
■ガバナンス体制
コーポレートガバナンス・コードへの対応状況、内部管理体制の整備状況などを確認します。
■情報開示体制
適時開示体制の整備状況、IR活動の実施状況などを確認します。
■人材
IPOに対応できる人材が社内にいるか、外部から調達する必要があるかを検討します。
■企業文化
自社の企業文化、経営理念を明確化します。
目標設定
IPOによって達成したい目標を明確化します。
■資金調達
必要な資金調達額、調達方法、調達後の資金使途などを明確にします。
■知名度向上
IPOによる知名度向上効果をどのように活用するか検討します。
■信用力向上
IPOによる信用力向上効果をどのように活用するか検討します。
■人材獲得
IPOを人材獲得にどのように活用するか検討します。
■企業価値向上
IPOによる企業価値向上をどのように実現するか検討します。
情報収集
各市場の特徴、メリット・デメリット、上場基準、上場企業の事例などを収集します。
■各証券取引所のウェブサイト
各市場の上場基準、上場企業情報、最新情報などを確認します。
■IPOに関する書籍・セミナー
専門的な知識を深めます。
■証券会社・監査法人
IPOに関する相談や情報提供を受けます。
■類似企業のIR資料
類似企業の財務状況や事業内容を参考にします。
専門家への相談
証券会社、監査法人、弁護士などの専門家に相談し、具体的なアドバイスを受けます。
■上場可能性
自社の現状を踏まえ、上場可能性について意見を聞きます。
■市場選択
各市場の特徴を踏まえ、自社に最適な市場について相談します。
■上場準備
上場準備に必要な手続きやスケジュールについてアドバイスを受けます。
■リスク管理
IPOに伴うリスクや、その対策について相談します。
経営陣での検討
収集した情報や専門家からのアドバイスを基に、経営陣で検討し最終的な市場を決定します。
■現状分析
自社の現状と目標を再確認します。
■市場の特性
各市場のメリット・デメリット、適合性などを比較検討します。
■コスト
上場準備費用、上場後の維持費用などを考慮します。
■リスク
IPOに伴うリスクを評価し、対応策を検討します。
■将来展望
IPO後の企業の成長戦略、経営体制などを検討します。
未来を拓く、最適な市場戦略

最適な市場選択は、IPO成功の重要な要素であり、企業価値向上への確実な一歩となります。本記事で解説した各市場の種類の特性や上場基準、選択の要点を踏まえ、貴社の事業戦略と将来の展望に合致した市場をお選びください。
関連記事
上場の基礎から準備ステップや費用など網羅的な情報を取り上げています。